仙台の鐘崎のプレミアム笹かまぼこ「大漁旗」を食べながら、我が笹かまぼこ歴を振り返ってみた。

笹かまは、「そのまんまがいちばん美味しい」派と「醤油、わさび忘れるな」派。に分かれます。

練り物(かまぼこ製品)は、「蒸し」(富山の昆布巻きかまぼこ等)、「焼き」(仙台の笹かまぼこや豊橋の焼きちくわ等)、「茹で」(焼津の黒はんぺん等)、「揚げ」(宇和島のじゃこ天や沖縄のチキアーギ等)があり、日本全国、形や味わいが違えども、おいしいものがたくさんあります。

そんななかで今回は仙台の老舗メーカー、株式会社鐘崎の笹かまぼこをとりあげました。
私、仙台の出身で、笹かまぼに対してどう思っているかというと、昔からよく知っていて、その道を極めて有名になった遠い親戚みたいに、「小さいときから知ってるよ、いろいろあって有名になったんだよね」と、永きにわたって肩入れして見守ってきたのであります。

今回は、日本全国津々浦々の練り物ファンのみなさまには、「そうか、仙台の笹かまぼこってそんなことがあったんだ。それは地元の人しかわかるまい」と思っていただければ幸いです。

まず、みなさんに笹かまぼこの味を思い出して欲しい。そんなの急に言われても ……という方には、じゃあこうしましょう。
何のAdvance notice(前ぶれ)もなく、古い友人から笹かまぼこの詰め合わせセットがあなたの家に送られてきたとしましょう。
この場合、日曜日の午後3時〜4時ぐらいの夕食前に届くのがいいですね。箱を開け「おっ、笹かまか、いいね、いいね」となり、日本は現在、幸福度ランキング56位ですが、これで3つぐらいアップしそうです。
さっそく、一つぐらいならそんなにお腹も膨らまないし夕飯に影響ないだろうと、紙だかビニールだかよくわからない包装から一口分取り出すと、きつね色に焼いた、笹かまのちっといい匂いがします。ぱくっといってむしゃむしゃとすると、表面の焼いたところのしわしわが、ときどき上顎にあたり、そこにキチジやスケソウダラの魚のすり身の味なんでしょう、魚のうま味、程よい塩っけ、ビールが欲しくなります。

鐘崎のプレミアム笹かまぼこ「大漁旗」は、厚みが18ミリで食べ応えがあり、 ふっくらの食感、高級魚キチジ(キンキ)のすり身をたっぷりつかっているんだよね。

ここで、日本全国のおじさん方は笹かまに関しまして、「そのまんまがいちばん美味しい」派と「醤油、わさび忘れるな」派に分かれます。しかしおじさんは複雑で、醤油をつけたときには、こりゃ醤油いらなかったなと思い、醤油なしの場合は醤油が少しあったほうがよかったかなと思い、たまたま冷蔵庫に小田原のわさび漬けがあり、うひぃひぃと笹かまにのせて食べると「悪くはないけど、やはり、これは笹かまより、同じ小田原の鈴廣の上板かまぼこに合うのではなかろうか」と、頭の中で独り言を言っているのであります。

仙台笹かまで思い出すこと
さて、仙台生まれの私なりに、これまで笹かまぼこと、どのように付き合ってきたか、日本練り物Gメン(こんな人いないけど、雰囲気的には麒麟の田村裕さん)から取調べを受けるような感じで進行していきます。

麒麟 田村裕

日本練り物Gメン(以下日練Gと略):仙台ではどの家でも笹かまぼこをつくっていたのか?

「家ではつくったことはありませんが、明治生まれのおばあちゃんの世代では閖上(ゆりあげ:お隣の名取市の港、ここで取れる赤貝は高級寿司ネタ)から、担ぎやさん(女性行商人)がひらめを売りにきて、それをたくさん買って皮と内臓をとり、すり鉢ですって卵をつなぎにし、手のひらで平にのばし、竹串にさして炉端で焼いて食べたというのは聞いたことがあります」

日練G:笹かまぼこを初めてみたのはいつだ?

「はい、小学校の低学年(昭和30年代末)だったと思います」

日練G:どこでだ?

「近所の魚屋です。小さい魚屋でしたが、左側に売っている魚を焼く、小さな焼き場があって、そこですり身をぺたぺたとして竹串に刺し、焼いていました。長靴をはいたおじさんが、魚を売りながら焼いていました。中央に上からつるされ小さなカゴがあって、今で言うキャッシャーですね。小銭の出し入れをしてました」

日練G:その焼いたやつ、食べたことはあるのか?

「よく覚えていません。ただ、新聞紙にくるんでそれがほんわりと温かかったことは覚えています」

日練G:では、その頃はどんな笹かまを食べていたんだ。

「塩釜でつくられた廉価なやつです。袋に5〜6枚ぐらい入って、厚みは5〜6ミリぐらい。たぶん仙台の人の多くがそうだと思います」

日練G:しょっちゅう食べていたのか?

「佐藤文明君はよく食べていました」

日練G:誰なんだ?

「高校のとき3年間同じクラスだった友人です。サッカー部でインターハイにも出ました」

日練G:なんで佐藤文明さんが笹かまをしょっちゅう食べていたことを知っているんだ?

「はい、彼の弁当をいつも半分食べていたからです。必ず入っていました」

日練G:おかずはそれだけか?

「いいえ。塩しゃけ、卵焼き、赤いウインナーなどが主流でした。また、文明君は松島から通っていたので、冬になると地元で取れた牡蠣のフライもありました」

日練G:その弁当は美味かったのか?

「時々お母さんが、小さなビニールの瓢箪の醤油入れを忘れ、そのときは辛かったです」

日練G:友だちの弁当をいつも半分も横取りしていたのか?

「横取りなんて人聞きが悪いです。こちらは学食でカレーや冷やし中華をおごり、ちゃんとバーターが成立してました。余談ですが、高校最後の日に、文明のお母さんが私用にもう一つ別につくってくれました。このときはうれしかったです」

日練G:家ではどうだったのか?

「高校のときは、カトキチの冷凍エビフライなんかが出回り、それが好きでした。笹かまは、酒が飲めるようになってからお袋がつまみで出してくれました」

日練G:どんなおつまみだ?

「料理というようなものではなく、笹かま(塩釜の廉価)をお湯でゆがいて、1センチぐらいに切って、それにきゅうりの古漬けを刻んだやつをあえて、おろしたショウガをのっけて醤油を少したらして食べました」

日練G:うまかったか?

「はい。小鉢としては最高です。今もときどき食べたいと思うのですが、きゅうりの古漬けはなかなか売っておらず、いつだったかきゅうりのキューちゃんでやってみましたが、古漬けにはかないませんでした」

日練G:仙台へ行ったら、お土産で買うのか?

「もちろんです。お土産だけじゃなく、自分が新幹線で食べるのを単品で2つ買います。まとめて買うと、ときどき試食品をサービスしてくれるので、そのときは単品買いを控えます、ただ、これはくれるところとそうじゃないところがあります」

日練G:何か他に言うことはあるか?

「はい。仙台の先輩が時々『笹かまでもおくってやっか』と言ってくれるのですが、その時は遠慮して、無理しないでくださいと言います。でも、本当は送って欲しいです。できれば笹かまだけではなく、鐘崎の伊達揚げが入った詰め合わせだと嬉しいですね。あれも甘辛醤油で軽く煮るとうまいんです」

ぜひ、笹かまとセットで送っていたただきたい。

では、ここで当時の佐藤文明君の弁当、お袋の小鉢を再現します。
 【佐藤文明君の弁当】(昭和46年〜48年に食べていたのを再現)

現在塩釜に住む文明君に電話して、おかずの確認をしてつくりました。弁当箱はアルマイト。卵焼き、シャケ、赤いウインナー、そして笹かま(廉価品)、お漬物。ごはんは、海苔がのっかっていたときもあったが、ごま塩が多かった。だいたい早弁でした。赤いウインナーは今でも売っています。これはウスターソースが合います。我々の世代はなぜか、赤いウインナーに弱い。

【お袋の小鉢】

笹かま(廉価品)を湯通してカットし、刻んだきゅうりの古漬けを合えておろしたショウガをちょぅとのせて出来が上がり。これは日本酒のあてに。笹かまは、わさびだけではなく、ショウガ(自分でおろす)にも合います。

鐘崎さんに教えてもらった【笹かまでカツ丼】
さて、今回は株式会社鐘崎の営業部長、武藤貴峰さんと広報室の渡邉志織さんに、笹かまぼこの美味しい食べ方を伺った。

鐘崎の笹かまぼこは、化学調味料、保存料、でんぷん、卵白不使用。独特の弾力は魚肉に含まれるたんぱく質の繊維の絡み合いによるものだそうだ。

武藤さんも渡邉さんもわさびと醤油以外に、オリーブオイルに塩で食べるとか、チーズをはさむとか、アボカドのカプレーゼとか、若い人たちが好きそうな食べ方をよく知っていたのですが、私らの世代を意識してくれたのでしょう。「笹かまのカツ丼がうまいです」ということも教えてくれた。さっそくつくってみたのであります。

【笹かまでカツ丼】

我が笹かま歴のなかで、なぜ気がつかなかったのか、カツという手があったのか、なるほどねと思いつつ、豚肉のかわりに笹かまを揚げてみた。ふんわりとした食感で、これはグッドアイデアだと思う。

まずは、カツ煮。これは冷えてもおいしくて、弁当のおかずに喜ばれそう。

つくり方はカツ丼をつくるのとまったく同じ。タマネギたっぷり、タマゴはかたくならないように注意して、トロりと。あっさりとしているけど、しっかりしていてガッツリ食べたいときに、大漁旗一枚で十分に満足すると思う。こんなときでもおじさんは紅ショウガなんだな。

仙台の笹かまぼこが、こんなに有名になったのはなぜか?

というわけで、いろいろと書いてみましたが、仙台の笹かまがこんなに有名になったのは、仙台―東京間の新幹線が影響しているのではなかろうか?

私が20代の頃はまだ新幹線は開通していなくて、特急「ひばり」で仙台―上野間が4時間。しかし昭和57年(1982年)に大宮―盛岡間、昭和60年(1985年)大宮―上野間、そして平成3年(1991年)上野―東京間が開通して、今や仙台―東京間は、「はやぶさ」だと1時間31分に短縮されたように、私の遠い親戚は、仙台―東京間の乗車時間が短くなるほどに有名になっていったのである。

急に、かつて特急「ひばり」の車中で、漬物の匂いがしていたことを思い出したのですが、あの頃は、まだお土産に家で漬けた大根や白菜、きゅうりなどの漬物を持っていったのでしょう。そういう人たちの重かった漬物のお土産が時代の変化とともに笹かまに変わっていったことは何の不思議もない。いつの時代も美味しいのを食べてもらいたいのは一緒だもんね。

文:作並太郎

笹かまぼこ「大漁旗」】 
価格:3,110円(税込・送料込)
ご購入はこちら

■原材料名:魚肉(たら(輸入)、いとより、きちじ、ぐち)、魚介エキス、味醂、清酒、食塩、砂糖、果糖、きちじ魚醤

■内容量:笹かまぼこ・大漁旗×5枚入り


【揚げかまぼこ「伊達揚げ」】  
価格:3,240円(税込・送料込)
ご購入はこちら

■原材料:魚肉(たら(輸入)、いとより)、砂糖、魚介エキス、米みそ(大豆を含む)味醂、清酒、植物油脂、食塩

■内容量:伊達揚げ×10枚入り

■笹かまぼこ「大漁旗」揚げかまぼこ「伊達揚げ」保存方法
冷蔵10℃以下にて保存ください。
※黒または赤の斑点は魚の皮です。
乳成分を含む製品と同じ製造ラインでつくられており、
また、原料の魚は、えび、かにを食べています。

■製造者
 宮城県仙台市若林区鶴代町6-65
 株式会社 鐘崎
 https://www.kanezaki.co.jp

文:作並太郎(本名:松木直也)
1955年生まれ。宮城県仙台市出身。桑沢デザイン研究所卒。宮城大学大学院食
産業学研究科修士過程修了。(専門分野:食育)
1979年より平凡出版社(現・マガジンハウス)の雑誌編集者及びライターとし
て「ポパイ」「ブルータス」などに携わり、音楽や食の関係者のインタビュー
を行う。のち様々な企業誌の編集長を歴任。
90年代後半三國清三シェフとのフランス取材において、ジャック・ピュイゼ教
授(フランス味覚研究所創設者)の「食育メソッド」の提唱を知り、2000年よ
り三國シェフの子どもたちの食育活動をサポート。
現在、東京都市大学付属小学校での食育授業(4年生・年12回)の「ミクニレ
ッスン」は11年目を迎えた。
吉本興業の新宿本社農園で栽培しているイチゴやトウガラシで食育活動を実施
し、「新宿よしもと唐からし」を商品プロデュース。
著名人の伝記も手がけ、著書に「ミクニの奇跡」(新潮社)「加藤和彦ラスト
メッセージ」(文藝春秋)「アルファの伝説 音楽家村井邦彦の時代」(河出書
房新社)がある。

“仙台の鐘崎のプレミアム笹かまぼこ「大漁旗」を食べながら、我が笹かまぼこ歴を振り返ってみた。” への3件の返信

  1. 仙台の先輩です、遠慮なんてミズクサイじゃない?近々送りますよ、鐘崎で良いですか?

  2. 笹かまのカツ、今度やってみます、笹かまと、きゅうりの和え物(酢の物)も美味しいですよ❗

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