世界が認めたソーセージ〈グロースヴァルトSANO〉のソーセージを食べてみた。ゲスト:バンビーノ 藤田ユウキさん

静岡県富士市にグロースヴァルトSANOという、2006年に国際ハム・ソーセージコンテストでインターナショナルチャンピオンを獲得した、自家製ソーセージの専門店がある。佐野友俊(昭和32年生まれ)さんと佐野弘行(昭和36年生まれ)さんのSANOブラザーズによる、世界が認めたソーセージ専門店だ。今回はその逸品を紹介します。

さっそく〈グロースヴァルトSANO〉のソーセージをいただく。

写真左から、モッツァレラヴルスト、上がパテ・ド・カンパーニュ、下はヴァイスヴルスト、そしてビアシンケン。

私たちが、ドイツ風のソーセージを日常的に食べるようになったのは、1985年(昭和60年)に発売された日本ハムの「シャウエッセン」あたりからだと思う。それまで粗挽きソーセージにはあまりなじみがなかった。ただ、都会にはドイツ料理専門店があり、そういったところでは本場の味が楽しめた。今はバルや腸詰専門店など幅広くいろいろなソーセージを味わうことができる。
では、世界の頂点に立った〈グロースヴァルトSANO〉のソーセージを食べてみよう。

佐野弘行さんにおいしく食べるコツを教えてもらった。

【モッツァレラヴルスト】
ヴルストはドイツ語でソーセージの意。ドイツ産モッツァレラチーズ入りで、とろっとします。さっそくグリルとボイルの両方を試すが、グリルのほうが、味が引き締まる感じがした。ボイルはホットドッグに。
弘行さんからは「ケチャップはつけない方がいい」とアドバイス。

【パテ・ド・カンパーニュ】
白ワインたっぷりで焼き上げたレバーパテ。こういうのはバゲットがないとはじまらない。弘行さんは「白ワインに合います」と。

【ヴァイスヴルスト】
レモン風味の柔らかな白いソーセージ。ドイツ・バイエルン州の伝統的なソーセージらしく、日本ではあまり売られていない。
これはボイルで。ドイツレストランでしか食べられないような本格的な異国を思わす逸品。ボイルはホットドッグに。
弘行さんは「ケチャップはつけない方がいい」と。

【ビアシンケン】
ドイツソーセージの王様と言われているもの。滑らかな生地の中に赤身のハムとピスタチオが入り、フルーティーでスパイスも効いている。
まず5ミリぐらいにスライスして丸かじり。その軟弱ではない肉質の歯応えに、「今までにこんなしっかりとした味わい深いのは食べたことがない」と実力を感じた。食パンにバターを塗りサンドウィッチでいただく。
弘行さんは「パンにはさむと味はまろやかになる。厚めにスライスして、無塩バターで。マスタードはオランダ・トンズ社のつぶつぶのマスタード。ケチャップはつけない方がいい」と。

「ケチャップはつけない方がいい」

ここまでおいしく食べるコツで、「ケチャップはつけない方がいい」という弘行さんのアドバイス、これは重要である。

というのは、私はソーセージにはケチャップ派で、これは友人たちといつも論議の的になるのだ。ホットドッグの通は、「ケチャップをつけたらソーセージそのものの味が台無しになる」と言うのだが、「いい料理、それは思い出だ」と言ったのは、ジョルジュ・シムノン(『メグレ警視』シリーズを書いたベルギー生まれの小説家)だ。

私のソーセージの思い出は、かつて、メジャーリーグ取材、ドジャースタジアムで食べたホットドッグと初めてニューヨークへ行ったときにセントラルパークの近くの屋台で食べたホットドッグが強烈だった。

コッペパンにはさまれたソーセージにケチャップとマスタードをかけて、これにザワークラウト、刻んだオニオンの辛さ、ちょっと甘辛のレリッシュ、こんな食べ方を初めて知ったのですが、どうにもこうにも青空のスタジアムの雰囲気、スクリーンボードの賑やかさ、目の前で繰り広げられるメジャーリーガーのプレイ、「ホットドッグはコレだよね」と。もちろんソーセージの肉汁がじゅわっと広がり、何とも言えない満足感に浸ったのであります。

しかし、これが最初にフランクフルトで本格的なソーセージを味わったり、パリのシャルキュトリでブータンノワールなんかにはまったら、人生におけるソーセージへの思いはまた違ったものになったのかもしれない。また、日系アメリカ人の友人に「魚肉ソーセージはソーセージではない」と言われたときはショックだった。(あれはあれで最高なんですが)

そんなわけで、今回は佐野弘行さんが言う「ケチャップは付けない方がいい」というのは、まさしく自分たちが挑んできたドイツソーセージへの愛なのでしょう。彼らもまたドイツの本物のソーセージを食べた思い出の記憶のなかから本物の味を習得したはずです。

ですから今回ケチャップはNot goodです。いかんのでしょうか?
いかんのです。つけないで参りましょう。

佐野友俊さんと佐野弘行さんのSANOブラザーズ

国際ハム・ソーセージコンテストの審査方法

ちなみに国際ハム・ソーセージコンテストでインターナショナルチャンピオンを獲得した弘行さんに、どんな審査方法なのかを伺った。
審査員はドイツのマイスターたちで、職人さんたちの奥深い世界。審査項目は100項目、減点方式で減点がないものが金賞となるのだが、おおよそ次の項目が主体だそうだ。

「形がしっかりできているか」

「ソーセージの生地がしっかりできているか」

「スモークするものは適切にスモークがのっているか」

「香り・アロマの審査」

「中身の審査(断面、さらに縦、横に切り審査)」

「入るべきものが入っているか」

「味の審査(『皆のお手本になるべきものは形から味までしっかりしてないといけない』)」

バンビーノの藤田ユウキさん登場

今回は強力な助っ人をお呼びしました。バンビーノ 藤田ユウキさんです。彼は調理師学校にも通い、ちゃんと料理を勉強し、現在では料理を得意とするよしもと芸人が集まるよしもと料理ブ!でも腕をふるっております。

「料理ブ!」は、料理を通じて、笑顔、食育、地域貢献、エンターテイメントを作り出す部活。

料理ブ!部長:いけや賢二さん
部員:ロバート馬場裕之さん、ボルサリーノ関好江さん、イシバシハザマ石橋尊久さん、バンビーノ藤田ユウキさん、だけだバーベキューさん、はんにゃ川島ofレジェンドさん、THIS IS バン吉田結衣さん

まずは、〈グロースヴァルトSANO〉のソーセージ食べてもらい、その感想を伺う。

藤田さんは中学のときに料理に目覚め、高校卒業後、辻調理師専門学校に進みイタリア料理を学びレストランで働き、吉本総合芸能学院(NSC)で石山タオルさんと出会いバンビーノを結成。バンビーノというコンビ名はせきやてつじの料理漫画『バンビ〜ノ』からきている。

作並:〈グロースヴァルトSANO〉のソーセージ、どうでしたか?

藤田:凄いクオリティですね。『モッツァレラヴルスト』はほんまにフライパンで焼くだけ味が引き締まり、肉汁が溶けだしてチーズがとろとろ。『ビアシンケン』は焼いてもおいしい。ハムだけど肉の食感ですね。『ヴァイスヴルスト』は僕好きなんですよ。スパイスが効いて、レモン風味で本当に素晴らしい」

作並:ソーセージにはケチャップつけますか?

藤田:僕はつけません。

作並:そうなんだ。

藤田:どうしてですか?

作並:いや、どうかなと思って……

後日、藤田さんから料理写真とコメントが送られてきた。

【特別な日の朝食】

「今回、僭越ながらアレンジメニューを考案させて頂いたんですが、こちらのSANOさんのモッツァレラヴルストとビアシンケンがもうそのまま焼くのが一番おいしくて、余計なことはしませんでした。(笑 )せめてもと思い、半熟目玉焼きと好きな野菜を一緒にグリルして添えさせていただきました。 卵黄を潰して、ソーセージや野菜に絡めて 普段とは違う、『特別な日の朝食』というイメージです」

やはり、ケチャップは使用しておりませんでした。で、こちらもケチャップなしでホットドッグをつくってみました。

【ホットドッグ】

アメリカでもシカゴあたりのホットドッグはケチャップで味付けをしなくても、ホットドッグのソーセージにハーブなどの味がついているので、十分に美味しいとケチャップを禁止している専門店もあるそうだ。

そういえばドトールのジャーマンドッグも頼めばケチャップをくれるが、本当はおすすめしていないそうだ。

しかし、世の中おいしいパン屋さんは増えたけどコッペパンがなかなか売っていないぞ。マスタードもつぶつぶ派と普通のがあるが、どちらも用意し味わいます。ソーセージはボイルしました。ザワーとピクルスは要、また、レリッシュは大船のスーパーには売ってなかった。

〈グロースヴァルトSANO〉の凄さ

さて、〈グロースヴァルトSANO〉がインターナショナルチャンピオンを獲得するまでの、その歴史をひもとくと、家業は佐野精肉店を営み、代を継いだ二人の兄弟は独学でソーセージつくりを始めるのである。スパイスの調合、塩加減、スモークなど10年間の研究の結果、1994年にオランダ・ユトレヒト スラバクトで開催された国際職業食肉加工技術コンクールに出品し、日本人初の金メダルを受賞する。以降も本場ソーセージ国のドイツで世界に挑み、97年、2002年、2005年〜2007年、2016年に金賞受賞。そして2006年にSANOブラザーズは世界の頂点であるインターナショナルチャンピオンに輝く。

私みたいな素人にはその凄さはよくわからないが、例えるならスキージャンプ、元祖ノルウェーなどの北欧チームと国際大会で闘い、葛西紀明選手みたいに日の丸を挙げたようなものだろう。

「当時肉屋はどこでも焼豚、コロッケ、メンチ、ハンバーグなどを当たり前につくっていましたが、ハムやソーセージだけは問屋から仕入れて販売していました。僕らは、なんでハムやソーセージだけがそうなのか、自分たちで美味しいものをつくれないかと考えるようになって、でも、まわりはつくり方を知らないし、そんなものをつくってどうするんだ、設備投資が高いからやめておけ、と最初は理解者も少なく趣味的にやらざるを得ない状態でした。失敗の連続、試行錯誤が続きました」と弘行さん。

弘行さんが続ける。

「なんとか形になっても大量生産のメーカー品と比べたら価格も高く、自家ソーセージと言ってもそうそう受け入れられませんでした。しかし我々は根気強くお得意様を一人ずつ増やし、やがて、口コミで広がって行きました。種類も段々と増やしていき、そんななかドイツでコンテストがあることを知ったわけです。自分たちの実力を知るために出品を決意し、オランダ、ドイツで金賞をとりました。やがてインターナショナルチャンピオンにもなり、今では自分たちの技術や製法が正しかったことが証明されたと思っています」

世界に実力を認められたことに対し、弘行さんは「あえて言うならドイツの製法をきっちり守ったこと」と語る。

文:作並太郎

(商品紹介)
グロースヴァルトSANOチャンピオンのおすすめセット
 6,013円(税込)(※送料込み)

■内容
【ビアシンケン】1本 350g
【モッツァレラヴルスト】2パック(1パック150g)
【ヴァイスヴルスト】1パック 140g
【パテ・ド・カンパーニュ】1つ100g

■原材料
ビアシンケン:豚肉,牛肉,食塩,香辛料,リン酸塩(Na・K),調味料
       (アミノ酸等),発色剤(亜硝酸Na)
モッツァレラヴルスト:豚肉,牛肉,モッツァレラチーズ,食塩,香辛料,リン 
           酸塩(Na・K)調味料(アミノ酸等),VC,発色剤(亜硝酸
           Na),原材料一部に乳を含む
ヴァイスヴルスト:豚肉,牛肉,食塩,香辛料,リン酸塩(Na・K),調味料
         (アミノ酸等),V・C
パテドカンパーニュ:豚肉,豚レバー,食塩,香辛料,ワイン,調味料
          (アミノ酸等),発色剤(亜硝酸Na)

■保存方法:冷蔵保存(温度5℃以下)
      ※開封後はお早めにお召し上がりください。

■製造元
 静岡県富士市南松野2066-1
 有限会社グロースヴァルト
 https://www.e-hamya.com

文:作並太郎(本名:松木直也)
1955年生まれ。宮城県仙台市出身。桑沢デザイン研究所卒。宮城大学大学院食
産業学研究科修士過程修了。(専門分野:食育)
1979年より平凡出版社(現・マガジンハウス)の雑誌編集者及びライターとし
て「ポパイ」「ブルータス」などに携わり、音楽や食の関係者のインタビュー
を行う。のち様々な企業誌の編集長を歴任。
90年代後半三國清三シェフとのフランス取材において、ジャック・ピュイゼ教
授(フランス味覚研究所創設者)の「食育メソッド」の提唱を知り、2000年よ
り三國シェフの子どもたちの食育活動をサポート。
現在、東京都市大学付属小学校での食育授業(4年生・年12回)の「ミクニレ
ッスン」は11年目を迎えた。
吉本興業の新宿本社農園で栽培しているイチゴやトウガラシで食育活動を実施
し、「新宿よしもと唐からし」を商品プロデュース。
著名人の伝記も手がけ、著書に「ミクニの奇跡」(新潮社)「加藤和彦ラスト
メッセージ」(文藝春秋)「アルファの伝説 音楽家村井邦彦の時代」(河出書
房新社)がある。

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